前回のこの欄でアルフォンス・ドーデの「風車小屋だより」について触れた文章を書いた。これが契機になったのかどうか、かつて英米で(遅れてわが国でも)大ベストセラーになった「南仏プロヴァンスの 12 か月」(河出書房新社、ピーター・メイル著、池 央耿訳)を思い出した。と同時に誰のどの本で読んだかは思い出せないが「現在あるドーデの風車は(観光用に)適当に選ばれた。その風車がミストラルで壊れると近くの違った風車をそれだと言うことにした」という趣旨の文章とそれを読んで「皆が喜ぶのならそれでもいいじゃないか」と私が思ったことが頭の片隅から蘇った。ミストラルとは冬から春にかけてアルプス山脈からローヌ渓谷を通って地中海に吹き降ろす寒冷で乾燥した北風のことである。
私が思い出した文章はひょっとしたら「南仏プロヴァンスの 12 か月」に書かれていたのだろうか、しかしこの本は既に処分してしまったのではないかと心配しながら書庫を捜索し無事見つけ出した。この本の横には同じ著者の「南仏プロヴァンスの木陰から」(小梨 直訳)もあった。
懐かしく読み直したが、残念ながら私の記憶している文章はこれら二つの著書には存在しなかった。しかし、久し振りに読書の楽しさを感じた。
「…… 12 か月」では1月から 12 月までの各月毎にいろんな観点からプロヴァンスの生活を眺め、カルチュア・ショックを体験しながら、それに馴染んでゆく過程を月々の気候の移り変わりに沿って書かれている。そこに流れる通奏低音は脱都会だろう。
「……木陰から」は20頁前後の 19 編のエッセイで構成されている。それぞれ興味を引くが、今回は「アヴィニヨンの胃袋」を面白く再読した。ここではアヴィニヨンの中央市場の風景が生き生きと描かれている。
最後に置かれたエッセイは「ロゼワインに透かして人生を見ると」と題して